【いつかやってみたかったこと】よしもとばなな著「サウスポイント」をハワイで読んだ感想
憧れのハワイ島にて・・・
こんにちは、えすです。
先日ハワイ(オアフ島ではなくハワイ島)に旅行しまして、ずっとやってみたかった(ある意味)聖地巡礼をしました!!!
要は、ハワイ島でハワイが舞台の大好きな本を改めて読んできました。(ただの再読)
そのハワイ島が舞台の本がこちら。
『サウスポイント (中公文庫)』よしもとばなな著、中央公論新社、2008年
個人的によしもとばなな作品の中でもかなり上位に入る大好きな本です。
何がそんなに好きなのか自分でも謎だったのですが、やっぱり舞台のハワイ島によるところが本当に大きいみたいだと確信しました。
~一応あらすじご紹介するとこんな本~
★それぞれにハードな事情を抱えた家族で少し苦労して育った「私」と珠彦くん
☆小学生ながら強くひかれあった彼と家族の事情で離ればなれになり十数年
★大人になった「私」はふとしたきっかけでハワイ島、サウスポイントで珠彦くんと再会することになる・・・
ばなな男子にしては結構へなちょこな感じが漂う珠彦くんですが、それがまたいい。
ハワイ島という自然溢れた土地ではイケイケに飾ってない方がいい。
ばななワールドに共通の、ただの日常風景もただの日常会話も全部がきらきらした大切なモノに見えてくる情景描写は健在。
それでいて、ハワイ島の魅力をふんだんに伝えてくるからもう堪らないですよ。
何年か前、はじめてこの本を読んでからずっとハワイ島に行ってみたい・・!と思っていましたが今回ようやく念願叶った。
なにが魅力的かって、やっぱり人が溢れて無駄にエネルギッシュじゃないところかな。
嫌なことも、「しょうがないなあ」と思うことも、面倒なことももちろんあるにはちがいないけれど全体的に生き急がなくてすむような、存在して暮らしているだけでいい、みたいな空気感をすごく醸し出してくる文章なので。
作中のことについていえば、珠彦くんと運命的に再会した「私」は珠彦くんのちょっと重すぎる愛に引きつつもハワイの自然に癒されながら「まあ、いいか」と馴染んでいく。
いろんなことがいっぺんにありすぎて頭がよく働かなった。
でもきっとそのくらいのほうがいいのだ、このハワイの夜の甘い風や、海の匂いや、陽に焼けてひりひり痛い肩や、はだしとサンダルのままで一日を過ごし固くなった足の裏や、そういうものが頭の動きをほどよくまひさせてとても心地いいのだ。 (p152)
そうそう、そうですね。
私の今回の滞在はリゾートホテルだったのだけど、珠彦くんの家がある(設定の)コナ
のコンドミニアムとかに泊まってみたらもっと追体験できたかな、なんて夢想してしまうくらいにはハマってしまった。
普通に読んだ時から、「ああ、いいなあ」って思ってたけど、
実際にハワイ島で風に吹かれて陽に照らされて、海を見ながら読んでみたらなんだかもう格別で、「私」が初めてハワイ島にやってきたシーンからはもはや「私」と一緒に本の世界にトリップしてた。
こちらは実際の画像(笑)
サウスポイントについて
単純にハワイ島の自然の魅力以外にも、ばなな女子の(今回は男子も)こじらせ具合がまた絶妙で日本にいたらとても生きづらそうな人たちが、ハワイ島では「風と光に溶けて幽霊みたいになっていく」くらいすっと馴染んでしまう描写もまた、本当にハワイが好きな人にしか書けないだろうなあと思うのです。
で、そんなこじらせた登場人物達にまとめて絶大な影響を与えてきたのが「サウスポイント」
ガイド本にもよく載ってるアメリカ最南端の岬。
この本を読んで初めて知ったところだったので、それ以来ずーっと行ってみたかった。
結果はまあ岬までは行ってないんですけどね。←え
★ちなみにサウスポイント、行くとしたら、車でしか行けません。
サウスポイントに行くツアーはあまりなさそうなので、自力で運転していくしかないかと。行き方はコナの街からひたすら南下して1時間半くらい??
「ここを曲がったらサウスポイントだよ」というビュースポットから遠目にみることしかできなったのが心残りなので、次にハワイ島を訪れる際には絶対にリベンジしたいと思います。
作中では「私」と珠彦くんの本当の意味での再会の場所としてとっても大事なシーンの舞台であり、そもそもこの本の表紙でもあり、もっと言うと姉妹作的小説の『ハチ公の最後の恋人 (中公文庫)』の主人公カップル(そして珠彦くんの両親)が運命的な再会を果たした重要スポット。
「空と海と大地が接する<世界の果て>」について私の表現力では絶対に出てこないであろうよしもとばななの描写が秀逸すぎるので以下引用です。
海と空、天界とこの世、風と潮、いろいろなものが美しく混じり合って溶けていたあの地点で、私はこの世を支配している力がもたらす、また別の裂け目を見たのだ。二つの世界の巨大な力が混じるところを、この世には別の世界を垣間見せるたくさんの裂け目があり、それに感応する魂を抱いている限りは、いろいろなものをただ見ていたい、愛する人たちを助けていたい、そう思った、きっとこの場所は、たまに人間にそんな不思議な力を見るのを許してくれる、とっても稀で、厳しくそして優しいところなのだろう。(p232)
「私」の思いであり、作者の思いでもあるこの言葉は、響いた。
もちろんハワイ島にだって現実の暮らしがあるのだけどそれを超えたところに、やっぱり他の土地では得られない不思議な力がある気がしてならない。
本当にそう思わせてくれる場所と、本です。
猛烈におすすめ、本も、ハワイ島も。