【辻村深月】不器用で愛しい20代の青春ストーリー
青春ミステリーの旗手といわれる辻村深月著、
改めて読んで、いい作品だなあとじんわり。
人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだーー
あの事件から10年。
アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。
夢を語り、物語を作る。
好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。
空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。(amazon内容紹介より)
この本の楽しみ方は以下に集約されるかと思います。
再読も楽しい。
伏線回収をとにかく楽しむ
辻村深月作品は、作中の細かな伏線とラストの回収シーンが本当に鮮やかです。
できればここで全て挙げていきたいくらいですが、
ネタばれで初読みの楽しみが80%減してしまうのは避けないと。
ということで詳しくは読んでもらうしかありませんが、
ラストに向けてドミノ倒しのように真相を明かしていく
手腕はとんでもなく爽快です。
良いことも悪いことも決して永遠には続かない
もはやこの物語のテーマにもなってるかと思う部分。
まさにこの通り。
作中、売れっ子脚本家の赤羽環をオーナーとするアパート・スロウハイツには
一人の超人気作家とクリエイターの卵の若者が暮らしている。
気の合う同年代の仲間と切磋琢磨し合う居心地のいい空間。
誰しもにそういう時代の経験があるのでは。
学生時代とか。
しかし非常にもその時間が長くは続かないことは、
初めからわかっている。
もちろん人間関係も少しずつ変わっていくし、ずっと続くものなんてないのだと切ない気持ちになる一方で、その中にも核となる変わらないものがあるのかもしれない。
なーんて最後まで読んで満たされる。
わかりやすい、事件性のものではないけれど
自分を創作活動でしか表せないとても不器用な人たちの
人間臭くて愛しい話です。