【おすすめ】素敵なカフェが出てくる小説
素材を生かした美味しそうな料理の描写、ゆっくりした時間が流れるカフェ、力強い野菜・・・
そんなキーワードに、おっ?と思う方は是非どうぞ。
まず第一に、雰囲気に浸る系の本だと思ってるので
登場人物たちの会話や情景に自分もトリップして楽しみましょう。←
ゆっくりできるときに時間に追われず味わいながら読むことを推奨しますよ♪
3つの側面から楽しむ
①理想的カフェ
珊瑚がオープンする惣菜カフェ「雪と珊瑚」
深夜、くたくたになって帰ってきた働く人達に
野菜たっぷりの美味しいおかずを提供したい、
そんな思いから出発するカフェはカフェ好きな人ならきっと憧れるはず。
林の中、晴れの日は木漏れ日が雨の日は雨音と静かな木の空間が広がる一軒家カフェ。
提供されたい!
大切に育てられた生き生きとした野菜と、
情景が目に浮かぶ調理の様子に
なんて素敵!となること間違いなし。
お仕事小説として読むには開業して軌道にのるまで順風満帆すぎてリアリテイないけども、
解説にあるようにその部分を寓話として
その上で主題である食べることにフォーカスして読むのがオススメ。
②生活の中の「食べること」の意味
本書のメインテーマ。
梨木さんが書く食べること。
私は下の引用に全てが詰め込まれてると思う。
こうやって他者から温かい何かを手渡してもらう
___それがたとえ白湯であっても___
そのことには、生きていく力に結びつく何かがある。
それは確かなことだ。
人生のどの局面においても
温かい食べものを丁寧に食べること、
それが力になる。ってことかなあ
普段改めてゆっくり考えることは少ないですが
こういう本を読んだときに
自分の生活に照らし合わせてみると何か大切なことに気づける感覚が、読書の醍醐味だと思ってます。
小説を読む意味がない、と言われたことありますがこんな風に考え方を豊かにするきっかけになり得るからとてもオススメなんだけどな。
作中では、飯テロで通報したくなるような
鮮やかな料理や調理の様子がありありと浮かぶ描写が
つぎつぎにやってきます。
特に、キーパーソンである少し不思議なくららさん。
手抜きと言いつつ野菜を余すことなく
素材の味を生かしておいしい料理に変えていくのですが、
これが、まあ飯テロ。
そんなくららさんが食事中に漏らす
「美味しいね、幸せね」
本書の大切なラストシーンにしっかりつながってくる。
食べることをようやく覚え始めた赤ちゃんのたどたどしい言葉が染み渡るのでした。
やっぱり、美味しいものを食べることは幸せなんだって。
③女性の成長ストーリー
ある意味最も主軸なテーマ。
主人公である21歳シングルマザーの珊瑚について。
自身の幼少期に母からネグレクトを受けた過去を抱え、
「普通がわからない」と漏らす達観した女子。
貯金もなく、働き口もなく、娘の預け先もない、頼れる身内もいない、
そんな厳しい状況に不本意にも涙を流す序盤から、
くららさんと出会い、
食べることは希望になる、と光を見出して
総菜カフェの開業を決意する・・・
順風満帆なカフェ開業の道筋は
彼女の成長譚としての意味合いを強く出すためであるのでは、
との解説もうなずける。
ただし、ただのいい話で終わらずに人間が持つ毒の部分が
しっかり書かれているところが私はとても好き。
母親のことも、その日暮らしとなってしまうカフェ経営も
根本的には解決という結果を待たずにお話は終わるのですが、
いいんです。
ご飯が、美味しくて、幸せだから。