【夢×企業×生き方】下町ロケットを読みました
有名すぎる『下町ロケット』(池井戸潤著)感想
さすが直木賞受賞作。
大衆受けする本には、まず間違いなく何かしらかの人を惹きつけるものがあると思いますが、こちらも例にもれず。(何様)
直木賞の受賞、ドラマにもなってますしそれだけのものがありました。
あらすじはコチラ。
以下amazon内容紹介より。
「お前には夢があるのか? オレにはある」
研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。
そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。
圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。
創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、
佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。
特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっていた――。
男たちの矜恃が激突する感動のエンターテインメント長編!
第145回直木賞受賞作。
池井戸潤、絶対の代表作
というか、私が今さら読んだだけで知ってる方の方が多いんでしょうね(笑)
絶対に面白いんだろうという期待のもと読みはじめたところ、
まったく裏切られました。期待以上だったから。
前半は、ライバル社からの妨害に対する攻防。
苦しい状況から1歩ずつ立ち向かっていく企業小説、うんうん、いい調子。
そして徐々に問題は佃の長年の夢であるロケット事業に関わるところへ移っていく。。
舞台が中小企業ということで半沢直樹でお馴染みの銀行マン(融資担当)的側面もよく登場。
いつものことながら、この作者が書く企業の内情というのはそこで働く人を含めて非常にリアリティがあって爽快にもなるし、鬱屈した気分にもさせられる。
現実かどうかはさておき、疑いなく本の世界に突っ込まれる。
読者と納得させるリアリティの高さはピカイチ。
例えば、佃製作所が持つロケット事業に欠かせない特許をなんとか入手したい「帝国重工」然り。
帝国重工側の担当者視点で内情が書かれつつ進んでいくから、こちらもこちらで自分の仕事に必死なのだというのがすごくリアルにわかる。
誰が悪い、というよりは「企業」対「企業」で話が進む。
なんだか泥臭いサラリーマンの奮闘を書かせたら池井戸潤さんの右に出るものはいないのではないかとすら思い始める。
何のために、誰のためにはたらくのか________?
「企業」対「企業」で進んできた話は、ロケット打ち上げという佃の夢によって徐々に社内、個人の問題を浮き彫りにしていく。
帝国重工の要求をのみ、特許権を利用した知的財産ビジネスに転換すれば会社は救われ、社員の生活も守られる。
しかし、その特許権を手放すことは、同時に長年の夢を手放すということ。
そんな佃社長の葛藤が続く章が本書で一番のメインパート。
所詮フィクションと思えなかった一文。
会社とはなにか。何のために働いているのか。誰のために生きているのか____。
佃がつきつけられているのは、会社経営における、まさに本質的な問題だ。(291p)
正解は一つでないことは重々承知。
ですが、お金のためだけに働くっていうのはいつか限界が来るんだろうなあと思わずにいられない。
佃製作所がこの創業以来最難関の問題にどう立ち向かったのかは、ネタバレになるので控えますが、単なるエンターテインメントとして読み物で終わらせてしまうにはもったいないので、心にとどめておこうと思います。
ちなみに、社員の間で佃社長への不満が爆発した際に出た若手社員の一言にすごくヒントがある気がする。
「ウチの会社は、社長の技術力と情熱で伸びてきたわけだろ。いってみれば、ホンダと同じじゃないの?それを否定したら別の会社になっちまうような気がするだけさ」
「オレはさ、ウチの社長はなかなかオモシロイと思ってるわけだよ。あの年になってもやりたいことがあって、まだそれを諦めてなくて、それに向かって純粋に努力してるわけさ。そのバカなところがウチのいいところじゃん。」(303p)
ここから、本田宗一郎の本を読んでみたいと思い始めた単純な思考回路なので、
もちろん本作のエピローグでもすごく感動しました。
基本的に、ベストセラーは間違いがないですね。(結果、新規開拓できない)